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「コンサルタントはこうして組織をぐちゃぐちゃにする」を読む。 [本]

先日電車待ちで駅構内の本屋を物色。

駅の本屋は棚が限られますから、普段新書の新刊くらいしか買わないのですが、「申し訳ない、御社を潰したのは私です。」というキャッチーな帯コピーが。
「コンサルタントはこうして組織をぐちゃぐちゃにする」というカレン・フェランという人の書いた本。手に取ってめくってみれば思わずそうそう!と吹き出す記述が溢れる。

冒頭読んでみると、

--------ここから--------

統計的には正確でよくまとまった研究でも、残念ながら経営理論の正しさを証明できる物はほとんど無い。多くの場合、経営理論は論文の査読や同分野の専門家同士による評価(ピアレビュー)や第三者による検証すら行われずに、従来の知識体型に組み込まれてしまう

---------ここまで-------

とある。
そんな素晴らしい、正しいスタンスで書いてしまったら、相当ガチンコの内容になるだろうと。今や大企業は戦略、プロセス管理、KPI、マネジメントにコーチング、人材育成、人事評価の期待貢献、実績評価に至るまで、無理矢理な翻訳語で意味解ってねえだろ的な状況も多々ありつつ、経営、事業運営、人事評価全部をそれに乗っ取り行っている企業が主流。

そんなこの15年ですから、さすがにそれをガチンコで全部ひっくり返すような事書けないんじゃないの?と思って目次を見る。

1.「戦略計画」はなんの役にも立たない
〜「画期的な戦略」でガタガタになる〜

2.「最適化プロセス」は机上の空論
 〜データより「付せん」の方が役に立つ〜

3.「数値目標」が組織を振り回す
 〜コストも売り上げもただの「数え方」の問題〜

4.「業務管理システム」で士気はガタ落ち
 〜終わりの無い書類作成はなんのため?〜

5.「マネジメントモデル」なんていらない
 〜マニュアルを捨てればマネージャーになれる〜

6.「人材開発プログラム」には絶対に参加するな
 〜こうして会社はコンサルにつぶされる〜

7.「リーダーシップ開発」で食べている人たち
 〜リーダーになれる「チェックリスト」なんてない〜

8.「ベストプラクティス」は”奇跡”のダイエット食品
 〜「コンサル頼み」から抜け出す方法〜

これはガチ(笑

メッタ切りの目次だけで、宝島のライターさんが書く諧謔本、社会活動家が書く告発本であったとしても十分面白いだろうと思う訳ですが、実際長年コンサルをやって実績もある著者が、全て自分の取り組んだ案件と知見を用いて解りやすく説明しており、コンサルの弊害をなんとか解消しようと努力してきた中で、何をやってはいけないか、意味があるとしたら何かを赤裸々に書いた良書でありました。

この本、特に、今時なグローバルかつ傾きつつある大手企業に御勤めの方、この10数年訳解らず導入され社内に混乱が引き起こされる中で、絶対おかしいだろ、と思いつつ、最早その遂行が評価になるのでしょうがなく折り合いつけてるとお嘆きの貴兄(はとんでもなく沢山居るだろうと推察しますが)に猛烈にお勧めします。

読んだ人は、幾多の悲喜劇を再体験し、かつそのバカらしさの説明ができる様になるでしょうし、もう1冊買って、手段が目的になってしまっている連中に送りつけたくなるであろう事必至です(笑

世の中の大抵のウソは、架空の事象を追加する事でなく、ある事を意識的に言わない、主体を変える、時系列を曖昧にしたりズラす事で出来ているというのが何度か書いてる私の持論ですが、証明されても居ない理論の帰納やら演繹やら微分したものを確定事項としてセットされた、ツール類を完璧に回そうとする事のばかばかしさを、雨後の筍のように湧いては消えるダイエット法と変わらないと解りやすく言ってのけてくれます。

戦略そのものも、立案時に状況を確認する以上に大事な意味はなく、幾多のツール等も、良い的確なコミュニケーション以上の意味はなく、全ては固有の環境の元で考えて行かなくてはいけないと。ツールの進捗や指標だけを評価の基軸とする事のバカさ加減、これが読んでてしみじみよく分かります。日本は過剰なまでに、まるで「○○道」の様に行う人々も居て、やっぱりその辺民度かなあと思ったりしてしまいます。それだけやってて食えるなら頭使わなくていい分楽だからね。

 最後に別の視点で少しこの本を捉えたい。

このblogでは、結構カレンさんと同じ様な事を沢山書いて来ました。昔はこういう事を社内の人間に言えば、話しにくいヤツということになりましたが、カレンさんがいるからもう百人力さ!(笑)つまりは、言って良いという事なのでしょうかね。

実際この辺は、竹中、小泉政権主導で最も花開いた領域です。
規制緩和の売り渡しを進める道具として、骨太にやって行く為に皆さんコンサル的手法を導入しなければ行けないと、それが企業のコンプライアンスやアカウンタビリティにマンダトリな(笑)事とされ、やらないとグローバルなエクセレントカンパニーになることは出来ないし、各経済誌も煽るプロパガンダの中で、株主と役員主体の報酬へ給与からごそっとシフトし、ホワイトカラーもエグゼンプションで、さもなくば赤福だぞみたいな(笑

その視点と、事業意思をぶった切って、管理手法しかのこらないと言う点は、随分書きました。ぱっと思い出すだけでも以下のエントリで書いてます。

http://zutsuki.blog.so-net.ne.jp/2013-08-25
http://zutsuki.blog.so-net.ne.jp/2011-12-04
http://zutsuki.blog.so-net.ne.jp/2011-11-06
http://zutsuki.blog.so-net.ne.jp/2010-12-18
http://zutsuki.blog.so-net.ne.jp/2009-10-12


私的には、カレンさんの本が人口に膾炙する形で出版された、という事は、

1.もう日本企業から吸い取ったからいいや、ガス抜きしよう。
2.悪いのはジャパンハンドから官僚でなくみーんなコンサルであったと尻尾切り。

なのだろうかと邪推したりします。すでに中小企業にまで増税同様の消費税up、大きい企業はコーポラティズム寄りになりつつある中、関係ないのかもしれませんが。

出版背景はおいて、本自体は、とても面白いのでオススメ!


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