腕時計の話２。

世の中が大変な事になっております。
が、凡夫の身では自分の周囲を守るしか無いので華麗にスルーしまして（笑）今回はあえて時計の気楽な話。

2年前くらいに腕時計の所謂ムーブ、6R15について書いたのですが、キャリパー型番の検索でこんなblogにもたどり着いて読む方が結構いらっしゃる。筋金入りのマニアでもなく文責甘めでご勘弁下さい。しかし、ちゃんと文章を読む方の少なくなったこのご時勢に、時計好きの方はやはりきちんと調べ物をする方が多いという事でしょうか。趣味というのはいいものですね。

6R15はセイコーのベースキャリパーとしてすっかり発展している模様です。
私のいくつかの6R15は、この間１個親類に上げたものの、幕張のセイコーアウトレットで迷っていたSARG015が、困った事にかなりの特価で売られているのを見つけてしまいまして、個数は変わっておりません（笑
偉い安いので、B級品ですかと店員さんに聞いてみると、Disconが決まった商品でメーカー在庫がある物はアウトレット専用価格で売られるという事だそうで、結果４割引で購入出来ました。量販や時計店の店頭在庫がまだまだある状況でこれですから、もうちょっと安かったら買うのにという標的をお持ちの方は、近隣にお店があれば是非覗いてみる事をお勧めします。

本日は、メカ二カルキャリパーの話しではありませんで、並み居るETA系列、冷戦構造の徒花中華系、国産系の機械の中で、ローテーションで生き残ってる唯一のクオーツのお話です。自動巻のローターで発電する所謂キネティックという奴で、キャリパーNo.は7D48。

腰上はパーペチュアルカレンダーの構成ですが、閏年含んだ４年間、３６５日x４＋１日分の日付を、完全にメカで動かしている。つまり閏年用のギアも一個きちんと持っている。
こんな仕様は、腰下が機械式ならマニュファクチュールの雲上レベルになってしまうし、時計のゼンマイ止めてしまうと、次合わせるのは恐らくえらい騒ぎとなり、価格も日常使用も現実的ではありません。

しかしこれがキネティックと組合わさると、素晴らしい事になる。
バッテリが残ってる間、トルクが要る（つまり電気を食う）長い針の運針だけ止めて、カレンダーの方だけインクリメントし続ける。持ち上げてローターが回り充電を始めると、時分秒針が現在時刻までスーッと移動する。

しかも、フル充電ならこの時計が丁度1サイクル分回るくらいの間、つまり丸４年間、引き出しの奥に転がして忘れていても、気付いて振った瞬間に現在時刻にキャッチアップするという素晴らしさ。
私の持っている個体は、この１０年間半年に一回くらい出してはしばらく付けてという感じですが、今まで止まった事はないし、個体差もあるんでしょうが、年差時計ではないのに１０年で３０秒狂ってないという精度です。

今は、ソーラー、GPSも良くなって、クオーツ時計の推しもの、メイン所はたいがいそっちに移行してしまいましたが、自力で発電して、動かなくなると自分でエネルギーを保全し、環境が変わり次第正確に復活するこのキャリパーは、なんというかクマムシというか、ハヤブサというか、シーモンキーというか（笑）。
セイコーには高いハイエンドモデルに、調速だけクオーツを使ったスプリングドライブもありますが、この7D48という形式のムーブは、ほぼ全ての時を司る自律性を持っており、オタク心をくすぐる時計の完成形の一つだと思う訳です。

持ってる個体は、まだブライツのコンセプトが今程バラバラになっていない頃のブライトチタンの薄いコーヒー色のダイヤルのモデルですが、当時クッションケースの時計を探していて、ブライツの琺瑯ダイヤルの機械式が手に入らず、同じブライツのクッションケースでもっと加工が精密で、文字盤の書体も同じで、後はメカに引かれて買った物です。
最近は、同じ7D48を積んだ時計は海外ベースの展開しかないのですが、ステンのケースのちょっとゴシックな感じのデザインのモデル（価格は低い）があり、海外ではそれなりに人気を博しているようです。

当時既に機械式ブームに入ってましたから、価格的に10数万出すなら態々メンズでクオーツ狙う人は少なかったでしょうから流通量も少ないでしょうし、私みたいに好きで買った人は手放さないでしょうから、オークションでは中々出ない。偶に出れば１０年落ちクオーツなのに４〜５万円は付く様です。

使っているうち、腕時計用のムーブメントの到達点の一つだと実感するのですが、市場環境の変化で、あまり7D48の積極的な展開がないのが惜しまれます。

こんなの作るの日本メーカーしかきっとないでしょうから、セイコーも頑張って貰ってもう少しフィーチャーしても良いムーブメントだと思いますね。

この辺で。

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