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懐かしき社食。 [日記]

台風でした。

当日の通勤は一苦労。
JRは福知山線の件の影響か、融通が全く聞かなくなった。
開通区間の復旧さえもグスグスで、もしかするとスジ屋さんがいなくなったのか、それともシステムが変わってしまったか。
夜半に至っても掲示板等の表示やアナウンス、車掌の情報がバラバラ。ちょっとこれには参りました。
駅員もホームにすっかり居なくなった。やはり質としてはかなり低下してるんでしょう。

いつも思うのですが、台風の直後は本当に良い香りがする。
空気中の汚れはたたき落とされて、遠くの森や海のから運ばれた空気と、生き返る土と緑の香りが混ざってなんとも言えない。被災された方は本当にお気の毒なのですが、森も揺すられ、川も底を洗われて健康になる。

最寄り駅の隣に辿りついて、もう昼あたり。
空は青く光が満ちていて、ふと思い立って仕事場まで歩きました。
今や取り壊されて見通し良く何も無くなってしまった出向元の本社の当りにさしかかる。光が溢れる。

思い立って歩いた理由は、この近くに一棟だけ、路地の奥に出向元の昔の姿を残しているオフィスがあるからです。
実は一度も足を踏み入れた事が無くて、屋上に錆びた金網のテニスコートがあったりする、フロアに生産ラインが置けるタイプの昔の窓の少ない工場タイプの建物。そこに確か食堂があったはず。
行ってみたくなった。

着いてみると、鄙びた感じで、受付の女の子の微笑みも柔らかく、警備のおっさんもにこやか。懐かしい。昔はこんな感じだった。
エレベーターは当然貨物用。多分30年以上前の物。入社した頃は対外的な役割の建物以外全部貨物用だった。このエレベーターに乗ると台車の取手握って片足載せたくなって、ちょっと笑える。
若い頃、台車に触らない日なんて無いくらいだった。皆そうだった。

食堂にいくと懐かしい匂い。いかにも事業所、工場の食堂で、ああこれだよと思う。定食をとる。大盛りにするー?というおばちゃんに普通でいいですと。

窓際に座って食べる。
豊かだなあと思う。社員の為の食堂。
過不足無い飯が安く食える。小鉢なんて35円。ざっかけないけど、居心地のいいリラックスするこのスペースと飯。こんな食堂で話しもし、思いがけない人や、昔の知り合い、同期に会ってまたコミュニケーションをとったり。全てが自然な中の事だった。

地方の工場も思い出す。昼休みにハンダの匂いの中、食堂に来る。
コメだけは良いの出さないと辞めちゃうんですよねえというような、地方にも仕事があった時代を懐かしく思う。
地元のと飲みに行く話をしたり、そうして仕事上も繋がっていった。あそこにはアイツがいると。いつか仕事ができたらいいなと。
それの総体が、会社だった。そんなコミュニケーションが無くなって久しい。

無くなってから、この会社が創造した新たな価値観は特に目立った物はありません。それは偶然ではないでしょう。

何故この建物だけこうやって残っていられるのかと考えて、ああと合点が行った。ここは、殆ど会社の下回りをやっている部署が入っていた。御用組合でなく本物の少数の労組の拠点だったでしょう。
懐かしく、また、今求められ初めている価値観は、最後にここにだけ残ったということのようです。

先日税収、特別会計、国債発行数の数字を書きましたが、
どんな言い訳も効かない数字がそこにある。絶対的に矛盾を突ける力が、”結果としての数字”にはあります。

同じ様に、少しこの10年の様子が見える数字がある。
98年度比の06年で、企業の経常利益は+33.2兆円で平均所得はマイナス30万円。どこにそれは消えたのか。
00年度比で、07年には企業配当は+18兆7千億円。従業員給与ー18兆8千億円。
金額一緒なので判り易い。株主のモノ化した会社のトップマネジメントは、従業員給与削って配当に全部回した。手つかずの利益の方はと言えば、産業界に巨大な投資もなかった訳で、内部留保、役員賞与です。

結果労働報酬は9年もダウントレンド。以前は産業投資や状況への対処という意味合いで下がった期間はありましたが、長い下りのトレンドはありません。
フロアにはやたら人が増えた。
正社員を減らして据え置いて、支払い金額は一見正社員より高いけど、半分会社に抜かれ、取っ払いで切り易い契約と派遣を増やして来た訳です。彼らも今切られて行く。

そしてこれこそが、旧与党と経団連が、グレン福島咲恵、ホリエモン、折口等々を旗頭にして進めて来た政策の結果。
産業を活性化させる訳でもなく、国民生活を良くする訳でもない。答えは金の行き先を見れば良く判る。
株主とトップマネジメントだけが儲けた。でも当時多くの人がそんな雰囲気に賛同した事もまた事実です。ノリノリだった。

問題がマクロであればあるほど、個別状況を言い立て並べるより数字を調べて突きつけた方が効果がある。
逆に数字を見て、個別状況に思いが至る様にならなければ、見識有る大人としてはいけないのだろうと思う。植草氏等はそう言う事がスパッと判る人でしょう。
選挙前に、”正誤はともかく、もうすぐ反対側に雪崩うつ”と書きました。それが小泉時代と同じ様に、ムードや感情で動いてはいけないから、こういったマクロの視点がいる。

そのトレンド最中に入った社員達は、古いのはもう10年選手。価値観を生み出していた現場を見た事が殆ど無い訳です。特徴は業務、キャリア指向と免責。
「ものにする」と言う意識が薄い。新たな意味を作れない。
レトリックが得意な連中がどっからか湧いて来て群がり、看板をぺらぺら表層的に模様替しながら食いつぶす。そう言う連中が主流になるので、それを手本としてしまう。

価値を生み出す現場を絞っていったツケは、これから来る様に思う。看板と資産食いつぶしたらそれで終わりですから。

昔グッドウイルってのは暖簾代だよな、某会社名も語源も悪い冗談だと日記に書きましたが、そんな中で、こう言った場所や、福利厚生はすべてコストに化けて金額支給に代わり、それもまた削られるという事になっていった。

1時も近くなって、人もまばらな食堂で味噌汁を啜りながら、そんな事を思う。
この5年くらい、カーブアウト気味で飛び出て、少し外から様々な企業と古巣を合わせ見ることが出来る場所に居た事は、今にして思えば案外良かったのかもしれない。

再び貨物エレベーターで下り、少し元気を貰った、懐かしき食堂を後にして、真っ青な空の下、先日引っ越したばかりの、自分の小さな会社へと向かいました。
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