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「中国文明の歴史」を読む。 [本]

岡田英弘「中国文明の歴史」読了。

 読もう読もうと思って積んで失念していたのですが、読んで見れば、正直「中国化する日本」の読後より遥かにインパクトありました。と書くとおかしい。その前提となる世界史、特に近隣諸国の歴史に私がものごっつう蒙昧だという事ですね。お恥ずかしい(笑

実際の所、読後、これまで読んだ中国に関する物を振り返ると、意味ないもの、夜郎自大&悪意のある物、インパクト有ったけどそうでも無くなったもの、そして正確にそれを把握している正味の物に別れてきます。戦前の読書人、知識人の方が、今より中国史等の理解は深かったでしょう。

たまたま前のエントリは旧約聖書を世界史と重ねて見た物で、昔の中東〜地中海周辺のユダヤ古事記という趣でしたが、この本はアジア地域を、特定民族の肩入れなく、入り乱れての壮大な通史となっています。ヨーロッパ史くらいの感じです。新書ですが、ノート片手に数回読まないとちゃんと把握出来ないです。これは。

結局、中国という国の枠や、核となる民族、言語がある訳でなく、流動的な民族の国々の中で、中原の覇者が王の中の親分となる、くらいのイメージなんですが、そのように聞いた事はあるものの、通史でなぞって実感しました。

すると、その上での我々日本は、良いも悪いも無く沢山登場人物が居る中の、中堅以下のワンオブ小国である事はもう間違いない所で、我々としては大陸に行くと、もう一つ王の上の概念の枠組みがあったと言う事なんです。
ただ、「陸の時代」の中国としては、攻略が苦手だった様に見える大陸辺縁の島国だったので、昔はアメリカ大陸に用はないですから、よろしくやっといてね、という程度で殆ど歴史に出て来ない訳です。

こんなに長い歴史の中で、南宋攻略別ルートの為に、世界最大の帝国を築いたモンゴル帝国の時代に2回攻撃されたとか、倭冦といいつつ大陸側の人が親分だったとか、そんな感じです。
秀吉の頃、国内が勢力が飽和してしまって、初めて他のアジアの国のような事をする訳ですね。半島に突然行って秀吉死んで引き返す訳なんですが、信長、秀吉、家康、この頃は大分世界の物事把握していたに違い無いです。
翻って国内を考えると、鎌倉以前の国としてのガバナンスは、これは縮小版中華的で、緩かったんじゃないですかね。

で、日本はそうした周辺のその他大勢だったのが、欧米の地政戦略に組み込まれて維新を経てからの存在としては、中原の覇者的歴史を終わらせ、文化的な影響を多大に与える、モンゴル並のインパクトを持つ国に初めてなった訳なのです。通史で言えば。

文化という意味では、元々日本の言語文化は中国の漢字によって成り立っている訳で、侵略という方の意味でなく、施政にはずっと使われていた科挙、官僚等のシステムや、言語、知識の体系が、新しい世界のダイナミズムで使えなくなった時、先にそれをこなしていた、日本の漢字ベースの翻訳システムによって多くが輸入されていったということになると。

昔化粧品のFMのCMかなんかで、革命も自由もその他重要な概念がかなり日本語であるとやっていて驚いたんですが、戦中から今の時代にかけての、国民国家的になるその過程で、近代国家に具備される様な概念や、共産主義的な思想そのものを含め日本の翻訳、解決策がベースとなったという事ですね。なるほどなあと。

各国と国交を結んで、鄧小平以降の経済施策で近代化を成し遂げた今は、その上で、直接に西欧の事物を吸収する素地が出来ていて、マナーやソフト面以外、日本的な物はお役御免になりつつあるという具合でしょう。

その上で、変な話、日本を敵にして愛国を煽り、官製きっかけとはいえデモも起こる状況、これは、1党であったり、まだ成り切れてはいないかもしれない、超巨大な国民国家として初めて纏まり切る為には、出ない方がおかしいというくらいの物でしょうか。国の上、でなく、1近代国家になった際の「国民」のアクションとしては。

妬み半分で、中国が潰れるとか言って溜飲下げてる人がいますが、大体紛争になんかなったらこっちが大変な訳で、いろいろあっても経て来た隣国として、モダンな方法でつき合って行く事以外に何かあるんでしょうね。
大体に置いて、こういった歴史の流れに身をおいている方々から見れば、アメリカに首根っこ掴まれてる姿は、逆に良く見えているのだろうと。

読んで、思惑ありの仕掛けに一喜一憂する事のアホさ、本屋やネットに溢れる煽りビジネスの下らなさを実感出来る1冊です。

この辺で。
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