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腕時計の話。 [日記]

 気楽なお話です。オロロジーまでも行かない腕時計の話。

私は針時計でないと時間が掴みにくいタイプの人間で、結納宝飾系、ロレ等は無縁ですが、メカへの興味もあって、時々買い足してきた安い時計を沢山持っております。クロノやら、手巻きの古い系統のメカとか、デカアツ(笑)とかあるのですが、最近オッサンらしく小径の3針デイトばかり使う様になってくると、派手さに隠れて見えてなかった実用時計としてのポイントが解ってくる。

安くて壊れない実用機械時計の世界の代名詞と言えば、7Sシリーズの機械を積んだセイコー5というのは時計好きには知れた話ですが、未だに人気で、わざわざ5としての高級モデルが各文化圏で企画される。アジアのロジスティックを支えるスーパーカブや、ゲリラ御用達の旧型ランクルと似たタイプのワールドスタンダードです。

結納時計のオメガのスピードマスターは、アポロ計画で有名ですが、エド・ハリスが演じていたフライトディレクターが、生涯使ってたのは実はセイコー5なんだそうです。傭兵がオフに買い求めるのはセイコー5だったりするという逸話も聞いた事があります。こういった冒険、ミリタリー系伝説は死ぬ程時計メーカーのブランディングに使われますが、エンドース契約料が高くて宣伝に使えない(笑)訳ではなく、淡々と売れるからわざわざ発掘したり宣伝に使わないだけで、セイコーが一番多いんでしょうね。近代的ダイバーモデルは本家本元ですし。

で、その隠れたワールドスタンダードのメカをベースに、ハックと手巻きをつけて、石を増やして持ちを向上させた、何年か前に登場した6R15という機械があるんですが、これの素モデルが実売で2万円くらいからのセイコーの機械時計ラインを構成している。このメカを積んだ時計が2、3個あるのですが、どうも最近こればっかり使う様になってしまう。

もちろん何かが優れているからそうなる訳で、なんでやねんと考える。

 海外メーカーも結構持っていますが、機械は、中華モノを除いて、ほぼ全てETAという会社が作っている。
3針、クロノ、パワリザ他、優秀な系統のメカを全部吸収して、業界の合弁、吸収で1社が量産する体制になっています。結果、一部雲上モノから一番安いのまで含め元値は同じ、2足3文だと言う事実に皆びっくりするのですが、各ブランドは組み直すとか、自社の互換部品入れたりしてそれなりに手をかける。アッセンブリは自動機では難しいので、単にOH出しても分解給油調整で3万くらいはする。
各ブランドでいろいろと加工し、カスタマイズして組んでいるし、ガワの作りにはお値段なりの手間がかかる訳ですが、もともと商売としては粗利率の非常に高い優秀な商売で、材料費は安い訳ですね。暖簾代とサポート体制分がそれほど乗っていないメーカーであれば、まあ適正な価格が殆どだと思いますが、初めて聞いた人は、清水から飛び降りてフェラーリ買ったらヴィッツとエンジンブロック同じと言われるたみたいで嫌ですよね(笑)

機械を自社で一から全部開発するのはとても大変で、今やそういう時計師さんもいない。
たまに自社専用開発する時計メーカーがありますが、そういったマニュファクチュールの時計は、やはり量産体制にないので、クルマレベルの価格だったり、少なくとも数十万したりという世界です。その意味でもセイコーは結構珍しいメーカーです。

その機械の話ですが、振動数の多い方が精度が出しやすいので、ETAの3針は基本8ビートですが、その分時間合わせに長くかかる。12時間分の分針を回すのに20数回クリクリとやらないといけない。構造上、デイトを動かすには午後時間にしないと歯車痛むので、さらにうんざりするぐらい回さねばならない。また、ガワと機械を両方作っている会社は非常に少ないので、竜頭のサイズや感触とのマッチングが悪い物も多い。

そうなると、幾つか時計を持っていて使う人には、見かけ気に入っていてもだんだん面倒になるわけですね。

一方、セイコーの新しいメカは、6ビートで、簡単にいうと精度の幅は広がって性能が落ちると言う事でもあります。しかし、時間合わせではぴゅっと一気に針を回せて朝引っ掴んで合わせるのに負担にならない。かつ竜頭のサイズと感触に納得感がある。
6R15は幾つか持ってるのですが、精度はどれも日差で見ると+5〜10秒程度で全く問題ない。精度に関しては、外乱に強い8ビートより絶対に姿勢差等で振れるはずなのですが、どうも、速くなったり遅くなったり1週間で1分もズレない。行って来いでこの範囲に収まる感じです。5ベースですから巻き上げなくても数回振れば良いし、かつ巻き上げ効率いいですから、手巻きで巻き上げた訳でもないのに、外して二日近く経ってから、時間合わせようと取り上げて、あらまと驚く事も度々。
セイコーは自社で何系統も機械を持っていますが、この辺、普及ラインの新しい機械の開発時、仕様として狙ったのであれば良い判断です。

パッと針合わせてすぐ使え、精度も良く、良い加減に頑丈、防水は世界のメーカーの中で最も信頼出来る。壊れても修理は安いから気にしないで使えると。結局、ブランドやら伝説やらデザインやら高級感やらを、時計本来の優れた部分がじわじわ越えて、元値の高い時計も1、2個あるんですが、セイコーの機械時計を使う頻度があがってきたという事であったようです。

何も気にしないならクオーツじゃんと言われると、個人的にはちょっと違う。
何時電池が切れるかわからない。また、長く電池が保つタイプは電力食わない様、トルクのいらないちまちました針とフェイスなので、針時計らしい針の長い顔の物を探すのが難しい。自家発電のキネティックはその点結構良かったりしますが、蓄電池も10年程度で交換ですし、海外行く人は解ると思いますが、最近のクオーツはパーペチュアル等複雑化していて、ユーザが時間合わせする様に作られてないんです。時計ごとに竜頭やボタンを回す順番を覚えるのは面倒です。

出張を想像していただくと良いのですが、飛行機のモニタで行き先の時間を見て、長年変わらない機械時計の針合わせのルールでパッと合わせられればそれが一番いい。この作業は生活を何時間ずらせば良いか、とてもしっくり自覚出来る。勝手に時計側で変わったり、変な設定をするのは嫌ですね。
私の様に、あくまで今の自分周辺の空間の行動の物差しとして腕で時間を刻んでくれれば良い人は賛同してくれるんじゃないでしょうか。大体、時差考えながらの活動の際は、この時代大抵PCスマホも起動させているので、腕時計みて考えなくていい(笑

結局、自分にとって、簡便、小さくて耐久性があり、どっかに情報を参照にいったり、電源貰ったり、電源領域に入り込まず、ただ腕につけてるだけで、死ぬまでくらいの長年の間十分な精度で動く実用腕時計があるとすると、現状この安価な機械6R15という事になるのですね。誠に日本メーカーらしい話ではあります。

このメカで、欧州メーカーの様に洗練されたデザイン、加工を施した物があれば、ちょいと高くても購入しようと思うのですが、上のクラスの加工技術やいいパーツを使ったりして、高いラインもありますが、昔ながらの伝統的な形以外では、どうもバランスが旨くつけられない、バラついた印象なのもまた日本メーカーらしい(笑
得意な伝統的なデザインの商品は、グランドセイコーの30万円から上で売りたいから、微妙にポイント外して商品化しているという説もあります。

 6R15の価格帯の海外メーカーの機械時計は少ないし、あってもセイコーの敵ではないのですが、実売価格で10万越える当たりになると、別の価値感が一気に際立ってくる。手触り、加工、デザインがぐっと纏まってブランド力が出る。

セイコーも装着感はいいのですが、それらと違う腕なじみ、滑りがあります。硬度と加工、光らせる場所光らせない場所、面取りの精度、磨きの程度、ガラスの扱いと、黄金比的な各部のバランス取りが優れている。という事は、これかなりジュエラー的な方法論ですから、ガラス、金属の宝飾の長い伝統の有る無しの差でしょう。日本メーカーの場合、そこはかなり不利。

割とセイコー的な実用時計ぽいメーカーで、スウォッチGPの一部になっているティソというブランドがあるんですが、そこが、ETA系で80時間のパワーリザーブのロービートを最近出して来ています。しかも、元々「同じ価格帯であればティソの作りが優れている」と昔から言われたブランドで、正に実売ギリギリ10万円切るモデルが出て来て気になっています。ラインナップをどこまで下げるかわかりませんが、揃って来たら、これは結構バトルになる。

スウォッチグループは、メカはETAを持って、元々のブランドの暖簾達が引きつけて来たユーザに合わせた商品ポートフォリオを組める状態にあります。一方セイコーは幾つもサブブランド作って展開しようと頑張ってますが、なんだか都合で、機械時計のブランドが電気になっちゃったりブランドマネジメントが今ひとつだし、デザインの資産とパワーが違う。

私思うに、コラボ的に昔ジウジアーロとかやっていましたけど、ヨーロッパのデザイナーを普通に主戦力として雇用して見るのはいかがでしょうか。なんて、中の人が聞いたら怒りそうな、勝手なお話でした。

今、中華のムーブを使うメーカーも出て来てきており、ETAポン載せだから出来た、部品発祥の小さいメーカーがETAの機械を供給されなくなって今後どうするか、一方大所のスタンダードなメカが性能的にステップアップしていると言う事で、なかなか腕時計の業界も横目で見ていると面白いです。

このへんで。
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